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私の適職を当ててください

 恋の悩みがないと言ったらウソになるけれど、佐智子がいま、いちばん悩んでいるのは仕事のこと。
 今度こそ、正社員としてマジメに就職しょうと考えている。履歴書に貼る写真も、スピード写真ではなく写真館で撮影してもらった。新調したスーツを着て。
 ところがいざ、履歴書を書いてみたら、職歴のところで考え込んでしまった。
 大学を一年で中退し、ファッション関係の専門学校に通いながら昼間は販売員のアルバイト。卒業後はアルバイトを転々としたフリーターの生活。考えてみたら、わずか三年ほどの間に20ヵ所近くもアルバイト先を替えていた。
 いちいち全部書いていたのでは、とてもスペースが足りない。就職情報誌を見ると、「働いた期間の長いものや、応募先の業種や仕事に関連の深いものを優先的に書くとよい」と出ていたけれど、佐智子の場合は、どれも長くてせいぜい三ヵ月。一過間で辞めたバイトもある。
「飽きっぽい性格だと思われるだろうな。職歴欄は空白のままにしておこうかな。でも、そうすると面接でいろいろ質問されるだろうし・・・」
 佐智子は、そろそろ自分の本当にやりたいことを見つけて、それに打ち込んでみたいと、最近、思うようになった。「このまま、中途半端で終わりたくない」と。
 思えば本当にやりたいことを見つけるために、社会勉強のつもりでさまざまなアルバイトに首を突っ込んでみたつもりだったが、結局、どれもこれもイマイチだった。
「私って何? 私が本当にやりたいことは何?」
 考えても考えても答えが出てこない。困り果てた佐智子は、当たると評判の占い師のもとへ走った。
「もうじき25になるつていうのに、いつまでもフラフラしていたらダメじゃない! 何やっていたの!」
 しばらくお説教された。勝気なはずの佐智子が、不思議と反発は感じなかった。東京でひとり暮らしをしている佐智子は、初めて親身になって自分のことを考えてくれる人に出会えたように思えて、ふっと肩が軽くなったような気がした。
「あなたは、事務のような同じことをコツコツと続ける仕事には向かないね」
「ええ、そうなんです」
「創造的な仕事に向いているね」
「あっ、そうだと思いました」
「絵を描くのが好きなんだね。イラストレーターなんかはどう?最近は女性でも売れっ子が多いし、あなたの新鮮な感覚が生かせるんじゃないかな。絵の学校に通ってみたら? いまから勉強しても遅くはないよ。勉強しなさい」
「えっ???」
 予想外の結論が出て、佐智子は戸惑ってしまった。確かに絵を描くのは好きだけれど、仕事にするほどの技量はないし、第一、自信がない。いまさら絵の学校に入って勉強しても、将来、仕事につながる可能性があるとは思えない。
「でも、本当に絵の仕事も無理だとしたら、私は何をすればいいのだろう」
自分では何もいい考えが浮かばなかった。クヨクヨ考えて落ち込んでしまい、アパートの部屋に引きこもる日が続いた。
 そんなとき、たまたま就職雑誌を見て、無料の職業相談機関があることを知った。電話で相談の予約を取り、当日、担当のカウンセラーにうながされて相談室に入った瞬間、思い詰めたようすで佐智子は切り出した。
「お願いです。私の適職をズバリと当ててみてください!」
 あなたの周囲にも、佐智子に似たような人が多いのではないだろうか。女性雑誌を開けば占いコーナーや心理テストのページをまっ先にめくり、「ふむふむ。私は創造的な仕事が向いているのか」などと納得してしまう人が。
 実を言うと、私も占いや心理テストを見ると、読まずにはいられないほうだ。
 当たっているなと思えば、「ナルホド」と納得してしまう。だが、まるで見当はずれとしか思えないことが書かれていれば、「そうだ。占いや心理テストがごときに、私のことなどわかるはずはないのだ。ザマミロ」と思う。 占いや心理テストの結果に振り回されることはないのだ。
 だいたい、自分自身にもわからないことが、アカの他人にわかろうはずがない。自分自身のことをこの世でいちばんよく知っているのは、他ならぬ自分自身だ。何しろ、自分とは生まれてからずーっと付き合っているのだから。
 私はときどき、自分とはサヨナラして、川の向こう岸、あるいは月の裏側へ行ってしまいたくなることもあるが、なかなか別れがたい。結局、自分には愛着がある。
 少し突き放して自分を観察してみると、「コイツ。けっこう面白いゾ。しょうがないな。最後まで付き合ってやろう」とも思う。
 あまり深刻に考えず、どんなに悲惨な状況に追い込まれても、「人間の人生っていうのは、予想もしないようなことが起きるのだな。だから面白いんだな」と、面白がってしまう精神を持つと、ずいぶん気が楽になる。
 どんな職業を選択し、どのように生きようとも、それは自分の自由だ。「かく生きねばならぬ」と、自分を縛りつけるものは何もない。しかし、完全な自由というのは不安でもある。何を選べば正しいのか。他の人は何を選んで「よし」とするのか。どうにも気になってしかたがない。
 もしも、間違った道を選んでしまったらどうしよう。それまで歩んできた人生は、決して消しゴムで消すことはできないのだから……。

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